「パティさんの編み物知恵袋」を読んだ感想

2024年1月23日 火曜日

もっとかんたん、きれいに編める
もっとかんたん、きれいに編める

結論

案外教える側も編み目のことを分かっていない。

私がうまく編めないのは私のせいじゃなかった

これまでに、帽子やマフラー、セーターなど、さまざまな作品を編んできましたが、なかなか思うように仕上がらず、悩んでいました。そんなときに出会ったのが、この「編み物テクニックの教科書」です。表紙やレビューを見ても、どのような内容なのかよくわからなかったのですが、良い意味で期待を裏切られました。

この本では、既存の編み物のテクニックを徹底的に掘り下げて、その改善案が具体的に示されています。基本となる表目、裏目から始まり、作り目、伏目や増し目、減らし目といったものまで、事細かに編み方を分解し改良したものを提案してくれています。

初心者や中級者からすれば、目から鱗の話ばかりです。なぜそうなるのか、なぜそのテクニックを使うのかという問いは、教える側が持つものですが、編み物業界においてはあまりそういう傾向はみられないようです。盲目的にテキスト通りに学び、またそれを後継に教え、深く掘り下げることなく漫然と伝えることばかりです。デザイナーや講師、書籍の著者であっても、そうした姿勢はあまり見受けられません。対価を得て価値を提供する人たちに、探求心と模倣ではない技術の分解や改良を試みる意欲を感じたことがありません。この本は、そうした姿勢を暗に非難し、本当に良い編み方はこういうものだと教えてくれます。指南すべき上級者の正しいありかたを見せてくれます。私自身、この本を読んで、これまでうまく編めなかったり、編み図が理解できなかったり、編み終わった作品の完成度に満足できなかったのは、私のせいではなく、教える側の怠慢にあることを教えられました。

もちろん、この本を読んだだけで、すぐに上達するわけではありません。しかし、この本で学んだことを実践することで、編み物技術は確実に向上するはずです。

翻訳への不満

翻訳に関しては、やや不満があります。訳者がアメリカ贔屓なのか、はたまた日本の編み物事情に疎いせいなのかはわかりませんが、日本語訳すべき部分とアメリカの事情をそのまま載せる部分の区別がはっきりしていません。

そのせいで、元の英語ではこう書かれていたんだろうなとこちらが推測しなくちゃいけなくなっています。これでは何のための翻訳なのだろうと感じる部分があります。

また、編み物用語に関しても統一感がありません。日本語表記と英語表記が入りまじり、何度もSSKって何?KFBって?左上二目一度って英語だと何?となって頭がこんがらがってしまい、理解の妨げとなっています。

使えるテクニック

この本で紹介されている編み方の改善案は、見たこともないテクニックも多く、まさに目から鱗です。一通り作品が編める人であれば、初心者でもすぐに取り入れられるものばかりで、習得コストが低く、けれど作品の完成度はぐんと上がります。

特に、スウォッチ(ゲージ)とブロッキングの重要性を理解していなかった私にとって、それらの説明と改善案は素晴らしかったです。早速、改善案を取り入れた作品作りを始めました。

つまり、スウォッチは大きく作り、ブロッキングまで行って出来上がりのサイズを計算するということです。これらをすることで、今までフィット感のいまいちだった帽子や手袋は今度からはベストなサイズを一発で編めるようになるはずです。

最後に

翻訳面ではやや不満もありますが、新しい編み方のテクニックを学べる点では大変参考になる内容だったと思います。編み物初心者から中級者向けの本として、確実なスキルアップが期待できる1冊だと感じています。